トルコ絨毯とヘレケ | ペルシャ絨毯と違い

公開日 2021年1月7日 最終更新日 2023年6月12日

概要
トルコ絨毯のショップ

テュルク民族は元々遊牧民族で、手織りの絨毯は生活に欠かせないものの一つでした。現代でも、各家庭の必需品であるだけでなく、絨毯は重要な産業の一つであり、国をあげて絨毯文化の保護活動を行っているようです。

トルコ絨毯

しかしながら、トルコでも日本と同様、商業用の機械織りのカーペットは多く流通していて、それらはMade In Turkiyeの「トルコ絨毯」として、国内外で販売されています。トルコ絨毯とはいえども、すべてが伝統工芸品である手織り絨毯とは限らないのが実情です。見た目はトルコ絨毯やペルシャ絨毯の柄でも、機械織りは安く手に入ります。

トルコ絨毯のショップ

絨毯を販売する店舗としては、工房直販と、絨毯販売店があります。絨毯文化にあまり馴染みのない私たちにとって、伝統的手織り絨毯の工房を訪問することは、トルコの文化伝統を知る上で、とても有意義な時間です。驚くほど上手な日本語での解説や、空飛ぶ絨毯のパフォーマンスはもはやお馴染みのものかもしれません。

まだトルコの絨毯工房を訪れたことがない方のために、トルコ絨毯の特徴と作り方をまとめてみました。

絨毯の歴史
絨毯織り機

絨毯の歴史は、先史時代(紀元前3500年ほど前)までさかのぼります。現在の中東からコーカサス地方にかけての地域が、絨毯の発祥地とされているようです。テュルク民族やセルジューク朝の人々は、絨毯をはじめとする独自の文化を携えて、アナトリアへとやってきました。オスマン帝国時代の後期に、トルコ絨毯が産業化され、女性たちの手によって織られて、世界中で販売されるようになります。

絨毯・キリム博物館/ウスパルタ

現在では、トルコ中に絨毯工房は点在していて、特に、ウスパルタ、カイセリ、スィヴァスなど、各地の地名がつくブランド品となり、それらはすべて手織りです。ウスパルタは絨毯織りの原材料を生産し、絨毯の名産地としても知られています。また、手織りの絨毯の工房がもっとも多い地域は、中央アナトリアです。特に、コンヤとカッパドキアには、手織りの絨毯工房がたくさんあります

最高級ブランド・ヘレケ
トルコのヘレケ絨毯

トルコに多数ある絨毯の中で最も有名で、最も高品質なのは、ヘレケの絨毯です。ヘレケは、マルマラ海地域のコジャエリ市にある地区です。オスマン帝国時代、帝国初の民間絨毯工房であるヘレケ村の絨毯工房が、皇帝の勅令により、ドルマバフチェ宮殿の絨毯やカーテンなどのファブリック全般を献上する名誉を授かることになります。その後も、皇帝の後援の下で名声を保ち続け、今もなお、トルコ最高級ブランドの名を維持しているのが、ヘレケです。ヘレケの絨毯は0が一桁多いかも、というほどに高級ですが、それには理由があります。

絨毯の作り方
絨毯の作り方

トルコ絨毯の特徴である、”ダブルノット製法”は、このヘレケによって始まったとされます。この手織り絨毯は丈夫で長持ちするだけではなく、裏からみても同じデザインであり、そのデザインも、ペルシャの影響を受けない独自のデザインになっています。現代では、ヘレケ絨毯の伝統と文化は、他の手織り絨毯工房にも引き継がれていて、トルコの手織り絨毯の特徴の一つとなっています。手織り絨毯工房で提示される金額は、高額と感じるものかもしれませんが、非常に高品質で、長く使えるがゆえのお値段であり、使ってみれば、よい買い物をしたと納得できるものです。

トルコ絨毯の種類
トルコ絨毯/イメージ
  • 機械織り
  • デジタルプリント
  • ウィルトン
  • タフテッド
  • 手織り
  • ウール/シルク/コットン/バンブーなど素材ごとの種類豊富 etc.
伝統的な手織り絨毯の見学

伝統的製法によって作られた手織り絨毯のみが「トルコ絨毯」と称されるわけではないことはご紹介した通りで、トルコの各家庭で使われる絨毯の中にも、安価な機械織りやデジタルプリントは多く流通しています。日本でも人気の、イギリス生まれのウィルトン織、アメリカから広まったタフテッドは、いずれも17~18世紀頃に生み出された機械織りで、商業用に分類されます。トルコでも、これらの絨毯は国内生産されており、「トルコ絨毯(Made In Turkiye)」として販売されています。使われている糸に化学繊維が含まれることや、手間暇がかかわらない分、手に入りやすい値段設定で、トルコ国内外で広く販売されています。デザインは、モダンなものから、トルコやペルシャのようなエキゾチックなデザインまで幅広く、品質もよいため、十分素晴らしい絨毯です。

伝統産業を守り抜くために
絨毯を織る織り子さん
絨毯の織り糸

このような、大量生産しやすい商業用絨毯の需要と供給が増大し、伝統的な絨毯の織り手が少なくなってしまったことに、危機感を感じたトルコ政府の国家教育省は、”TÜRKİYE EL DOKUMA HALI(トルコ手織り絨毯)”の織り手となるための、生涯学習コースを設置しました。それは、織り手となるための、重要な資格で、このプログラムを修了した織り手さんたちが、一枚一枚丁寧に、何時間・何日・何年と時間をかけて織り込む芸術的作品となります。

カーペットショップ/クシャダス・アイドゥン

トルコの絨毯は、各地域ごとに、織り方や使われる糸や素材に特徴があります。古くから、コンヤ、カイセリ、スィヴァス、ウスパルタ、ウシャク、ベルガマ、クラ、ギョルデス、ミラス、チャナッカレ、バルケシルの各地域で作られていて、特にウスパルタやカイセリの絨毯はよく知られています。

ペルシャ絨毯や段通(だんつう)との違い
絨毯の作り方

トルコ絨毯の大きな特徴である”ダブルノット製法”は、縦糸二本それぞれに結び目を作る独自の製法で、これによって他国の絨毯と比較して、丈夫で長持ちする絨毯になります。イランのペルシャ絨毯と、中国生まれの毯子(タンツ:日本では段通(だんつう)は、この結び目が一つである”シングルノット”です。

相場
天日干し中の絨毯

状態や年代や材質などにより、絨毯の値段は幅広いため、一概に言えません。ヘレケの場合は、150☓200サイズでだいたい30〜50万円くらい〜。ヘレケではない各地の手織り絨毯なら、コットンのものであれば、数万円〜。絨毯より軽くて安価なキリムもおすすめです。

いずれにせよ、決して安くはない買い物ですので、それぞれの違いを知り、個人にとって最良のものを選びたいものですね。

ギャラリー

※参照元:Türkiyenin Ustaları,Çınar Halı AŞリーフレット
※この記事は、登録日(最終更新日)時点の取材情報を元に作成しております。実際に訪れていただいた際、スポット(お店)の都合や事情により記載してある記事の内容と差異があることがあります。どうぞご了承くださいませ。

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