トルコのユネスコ世界遺産 | ディヴリーイの大モスクと病院

公開日 2021年8月8日 最終更新日 2023年9月6日

概要

トルコの遺跡が初めてユネスコ世界遺産に登録された1985年、イスタンブールカッパドキアとともにディヴリーイの大モスクと病院も登録されました。ユネスコがこれほど早くから注目し、リストに登録されているにも関わらず、世界的に有名なイスタンブールとカッパドキアの陰にすっかり隠れてしまっているように思えます。ディヴリーイをご存知ない方も多いのではないでしょうか。

ディヴリーイ/スィヴァス

ディヴリーイがあるのは、アナトリア半島中央部にあるスィヴァス市近くのとても静かな小さな町です。紀元前1500年頃のディヴリーイは、とても栄えた町であり、トルコでは最も古い町の一つとされています。

ディヴリーイの大モスクと病院/スィヴァス

ディヴリーイの大モスクと病院は、スレイマン・シャーの息子であるアフメッド・シャーとその妻によって建てられました。スレイマン・シャーは、オスマン帝国を築いたオスマン1世の祖父にあたる人物です。

スレイマン・シャーが部族長のとき、おそらくモンゴル帝国の征西を避けてアナトリアに入った。スレイマン・シャーはそこで死に、部族の一部はホラーサーンに帰ったが、スレイマン・シャーの子の一人エルトゥールルは遊牧民400幕を連れてアナトリアに残り、ルーム・セルジューク朝に仕えてアナトリア東北部のソユトの町を中心とする一帯を遊牧地として与えられ、東ローマ帝国に仕えるキリスト教徒と戦った。1280年から1290年の間頃にエルトゥールルは病死し、息子のオスマン(オスマン1世)が後を継ぐ。

オスマン家/Wikipedia

ルーム・セルジューク朝時代に、オスマン家によって建てたディヴリーイの世界遺産は、モスクと病院の複合施設となっています。

大モスク
ディヴリーイの大モスクと病院・エントランス/スィヴァス

ディヴリーイの世界遺産は、モスク病院霊廟と、複合施設で登録されています。その中でも一番の見どころとなっているのがこの大モスク(またはグランド・モスク、トルコ語:ウル・ジャーミィ/Ulu Camii)です。1228年から15年の月日をかけて、ヒュッレム・シャー(Hürrem Şah)によって建設され、1243年に完成しています。イスラム建築の最高峰とも、ディヴリーイの奇跡アナトリアのアルハンブラ宮殿、とも称されています。

天国の門
ディヴリーイの大モスク・天国の門/スィヴァス
ディヴリーイの大モスク・天国の門/スィヴァス

天国の門は、民衆がモスクへ入場する際に利用されていました。大モスクと病院の中で、最も装飾が美しい門です。その名のとおり、天国や楽園が描かれている門には、「スレイマン・シャーの息子、アフメット・シャーがこのモスクの建設を命じた」という一文が刻まれています。

西の門
ディヴリーイの大モスク・西の門/スィヴァス
ディヴリーイの大モスク・西の門/スィヴァス

西の門の装飾は、まるでレースのように繊細で、別名テキスタイルの門とも称されます。ルーム・セルジューク朝の紋章である双頭の鷲、イスラム神秘主義の象徴でもあるチューリップなど、見ごたえのある装飾が多数ほどこされています。大モスクには3つの門があって、ご紹介した天国の門と西の門のほかに、病院側にはシャーの門があります。

内部とミフラーブ
ディヴリーイの大モスク・内部/スィヴァス
ディヴリーイの大モスク内部/スィヴァス

石造りのモスク内部には、12の小さなドームがあります。石柱とミナレット(塔)は、1565年にオスマン帝国の皇帝スレイマンの命により、ミマール・シナンが補強したものだという碑文が残っています。この年に、モスクの内部も復元されたようです。

病院
ディヴリーイの大モスクと病院/スィヴァス

音を使って治療を施す精神病院としては、世界最古とされています。アフメット・シャーの妻であるトゥーラン・メレッキがこの病院を建立しています。

ディヴリーイの病院・内部/スィヴァス

地下に通っている水脈から水を汲み上げ、患者を水の清らかな音で癒す仕組みです。院内は音の反響を考慮した設計になっています。完成した年は日本では鎌倉時代にあたりますが、ここではすでに精神病患者へのヒーリング施設が建設されていたことになります。

王冠の門
ディヴリーイの病院・王冠の門/スィヴァス
ディヴリーイの病院・王冠の門/スィヴァス

病院へと入る門は、王冠の門とよばれています。この門には、ルーム・セルジューク朝の象徴である五芒星と八芒星がデザインされています。

基本情報
住所Divriği Ulu Camii ve Darüşşifası:Kale Mah. Divriği Sivas Türkiye
営業時間未定
料金無料
ミュージアムカード不可
その他情報・大モスクと病院は大規模な修復中で外観のみ見学できるようです(2022年8月時点)
公式サイトhttp://www.divrigiulucamii.com
アクセス拠点となるのは、スィヴァス(Sivas)市。
・電車/レイビュス(Raybüs)
電車は、朝晩一日2本。レイビュスとよばれ、所要時間は約3時間、料金は15TL。チケットはスィヴァス駅で購入。詳細はこちら(民間運営外部サイトへ)。
・バス/ミニバス(Otobüs/Minibüs)民間のバス会社(ディヴリーイ・ナザル・ツーリズム/シワス・ディヴリーイ・オズレム・ツーリズム)によるミニバスまたはバス。チケットはオトガル(バスターミナル)で購入。
[地図]
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