ミネラル豊富で女性に特におすすめ!ペクメズ(糖蜜)

公開日 2023年4月7日 最終更新日 2024年3月4日

概要
桑の実糖蜜/ドゥト・ペクメジ

ペクメズ(英語:molasses、トルコ語:ペクメズ/Pekmez)は、果実から作られる糖蜜です。そのままスプーンでいただいたり、朝食にパンやヨーグルトにまぜていただいたり、砂糖やシロップの代用として料理に使ったりと、トルコ料理には欠かせないものの一つです。実は、貧血持ちの私。ペクメズのおかげか、だいぶ体調がいいので、自信を持っておススメしたいものです。

黒蜜たっぷりわらび餅/イメージ

糖蜜の味は黒蜜と似ていますが、やや鉄分を含む味がするように思います。糖質もカロリーも高いものではありますが、貧血予防として、特に妊婦に「一日1スプーンを食べよう」と、トルコの医師たちはメディアなどで推奨しています。糖質とはいえ、血糖値をあげにくく、ビタミンやミネラルを豊富に含んでいるから、とされます。どのようなの糖蜜であるかにより、体に対する効果が変わるのだそうです。

ギュンバル(天日干し/カラメル化)中のペクメズ

様々な果実から作ることができるペクメズですが、トルコでは、葡萄から作られるペクメズが一般的です。ペクメズと聞いてまず思い浮かべるのは、田舎の農家の庭先で、大きな釜を使って、大量に作られているイメージです。もちろん、スーパーでも、瓶入りのものを気軽に買うことができ、トルコではメジャーな食品です。

キャロブ糖蜜/ケチボイヌズ・ペクメジ
ジュニパーベリー/アンドゥズ

葡萄以外にも、ローズヒップ、イチジク、キャロブ(イナゴマメ)、桑の実、プラム、りんご、梨、かりん、ジュニパーベリーなどで作ることができます。甘いシロップになりうる果実であれば、基本的には何でも作れるようです。

さとう大根(シュガービーツ)/イメージ

これらの果実に、甜菜糖の甘みを追加して、手間暇かけて煮込みます。ペクメズは甘みだけでなく、果実が持つわずかな酸味も大切です。トルコで”スーパーフード”といわれている理由は、それぞれの果実がもたらす健康への貢献がすごい、とされているからです。トルコで一般的に伝えられているのは、下記のような内容です。

ぶどう:貧血、食欲不振、胃腸虚弱、腎臓虚弱、動脈硬化予防、血液循環を緩和、ストレス軽減
いなご豆:貧血、性的強壮・不妊、コレステロールの低下、血糖値の低下、歯槽膿漏、骨粗しょう症予防、痩身・便秘解消
ジュニパーベリー:抜け毛予防、解熱、気管支炎、肝臓・脾臓・心臓疾患、痛風、アレルギー、かゆみ・湿疹・乾癬
くわの実:貧血、胃潰瘍、喘息・気管支炎、解熱、小児疾患

※上記は、トルコの一般家庭に言い伝わるものをまとめたものです。

ペクメズの作り方
ペクメズ
1. 果実を絞って煮詰める

果実から絞り出されたジュースは、そのまま飲むとかなりの酸っぱさです。チーズクロス(さらし木綿のような布)でろ過して、10~15分間ほど50~60度くらいの温度で煮立たせます。途中、灰汁とりや、灰汁に有効な卵の白身を入れます。状況によっては、途中で水分を追加することも。

2. ペクメズ土を投入

そこに、ペクメズ土(Pekmez Toprağı)とよばれる石灰土を投入します。石灰土は、ph値を上げて、酸性からアルカリ性に変えるという、ペクメズ作りで大切な役割を担います。酸味の調整が不要な果実の場合は、ペクメズ土を使わないこともあります。土と余分な成分は、鍋底に沈殿するため、上澄みだけを取り出して、再び火にかけます。

3.カラメル化する

水分がなくなって、カラメル状に色が変わってきたら完成です。これを、トルコ語では”タトゥル・ジュブク・ペクメズ(Tatlı Cıvık Pekmez)”といい、太陽の下でカラメル化する方法は、ギュンバル(Günbalı)とよばれます。

ペクメズの栄養価
ごまペーストと糖蜜/タヒニ・ペクメズ
糖類(グルコース・フルクトース)

ペクメズの成分のほとんどは炭水化物であり、その80%近くが、グルコース(ブドウ糖)フルクトース(果糖)です。果糖が身体にもたらす効果については周知のとおりで、消化器系に容易に取り込まれやすく、血糖値が上がりにくいとされている成分のようです。

ビタミン・ミネラル類

ビタミンB1、B2、カルシウム、カリウム、マグネシウムといったミネラル成分も豊富に含まれ、吸収率も高いとのことから、妊娠中および授乳中、病後の回復期にペクメズをとることをトルコでは推奨されています。特に注目されているのが、クロムというミネラル。

ひじきの煮物/イメージ

クロムは、インスリンの働きを高めて、糖質・資質の代謝を正常にする働きがあるようです。日本食では、ひじきや木耳・じゃがいもといった食品に多く含まれている成分。日本人には不足しにくいミネラルの一つなのだそう。最近の研究では、ペクメズは、ビタミンB1やビタミンB2、鉄分に関しては、ハチミツよりも豊富に含まれていることもわかってきているようです。

ペクメズの食べ方
そのままで

トルコの朝食には、バゲットやシミットなどのパンによくあう、カイマク、蜂蜜などとともにペクメズも食卓に並びます。タヒンと呼ばれるゴマペーストと一緒に食べること濃厚な美味さになり、ビタミンEも加わってより栄養満点です。

サラダに

バルサミコ酢またはレモン、オリーブオイルとペクメズの相性がとても良いようです。たっぷりのサラダとフルーツに、手作りのペクメズ・ドレッシングをかけていただきます。

マリネ

肉や魚をマリネするときに使うことができます。日本でも、ヘルシー志向の方はよく、マーマレードなどのジャムを使ってマリネを作るのと同じ感覚です。

お菓子やパンに

お菓子作りに、ヘルシーなハチミツやジャムを使うことは多くありますが、それらの代わりに、ペクメズを使うことができます。例えば、タンパク質が多くとれる“きな粉”とペクメズを練り合わせれば、滋養ある”きなこ棒”になり、おすすめです。

くるみと糖蜜のソーセージ/ジェヴィズリ・スジュク
くるみとペクメズのソーセージ/ジェヴィズリ・スジュク

トルコには、ペクメズとくるみで作る甘いソーセージ”ジェヴィズリ・スジュク”があります。バザールなどでも簡単に手に入る伝統的なスイーツの一つで、栄養価が高く、老若男女に愛されるおやつです。また、トルコのごまベーグル”シミット”も、ペクメズを使って作ることがあります。

ペクメズづくりが有名な町
ペクメズでつくるシミット

ペクメズ作りが有名な町としてあげられるのは、主に中央アナトリア地域とされます。農家が多いため、自家製のペクメズを大量に作ることができます。特に、カッパドキア地方のネヴシェヒルやニーデのバフチェリ地区、南東アナトリアにあるズィレ地区では、ペクメズが名産品の一つです。アナトリア南西部にあるムーラ市周辺では、ジュニパーベリーを使ったペクメズが特産品です。

キッチンでつくるペクメズ/イメージ

一方で、イスタンブールなどの大都市圏では、各家庭のキッチンで作られます。圧搾機や1時間半ほどコンロにかけて煮詰める必要があるなど、日本より広いキッチンとはいえ、少し大変な作業になります。手作りする家庭もあるようですが、一般的には、スーパーなどで購入するようです。

業務スーパーで販売されたペクメズ

日本でも、トルコ食材販売を行っているWEBサイトで購入が可能です。一時期は業務スーパーでも販売されていました(が、記載ない保存料添加が後日発覚して自主回収になったシロモノ…)。なかなか日本では糖蜜の知名度が低いようですが、”ミネラルたっぷりの液体状の黒糖”は、案外、さまざまな料理に取り入れやすく、役立ちます。見かけたら、ぜひお試しください。

ギャラリー

※この記事は、登録日(最終更新日)時点の取材情報を元に作成しております。実際に訪れていただいた際、スポット(お店)の都合や事情により記載してある記事の内容と差異があることがあります。どうぞご了承くださいませ。

※記事出典元:
Hürrıyet紙 sabah紙
Wikipedia:PEKMEZ チアミン リボフラビン
タケダ健康サイト
サントリーウェルネスONLINE

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